私がもらうのは version 2
私がもらうのは
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、二十も半ばを過ぎた今なら思う。
子供の頃の一年は長く、大人になってからの一年は短い。何処かの誰かが「二十代は二秒」と称したのを笑った過去さえ精々三年前の出来事のように感じていたが、調べ物ついでにグーグル先生に聞いてみたところ七年も前の発言らしい。
そりゃ、俺も歳を取るわけだ。
そんな調子で子供の頃に比べて全然違う時間軸で生きる我々社会人にとって、誕生日とはいつの間にか目前に迫り、そしていつの間にか通り過ぎてまた次の誕生日が迫っている。という、年末年始や年度初めとそう変わらない存在にすら成り下がる節すらある。
そりゃ、歳を取るわけだよ。俺も。
子供の頃はやたらと長かった誕生日から次の誕生日までの一年も、あっという間に過ぎ去っていき、気付けば社会に出てから何年目のソレか。孤独に過ごすのも何年目か。と自己嫌悪のループに入り込む始末。
三百六十五個、或いは六個ある普通の日の一つとまではいわないが。
節目ではあっても、めでたくも特別でもない。
これでも、アイドル事務所のプロデューサーという、一年をまだ長く感じる存在を――つまり年頃の女の子たちを預かる身分である分、まだマシな方かもしれない。下手をしたら一年を短く感じる存在同士でつるむ普通の会社員だと、気付けば誰にも祝われないまま誕生日が終わっている、なんてこともあるのだろうか。
劇場では何人かの社交的なアイドルが劇場スタッフ全員の誕生日を把握しており、全員が大なり小なりプレゼントを貰えるというのが常だから、忘れてしまう。なんてことは決してないのだが。
この短い期間にいったいどれだけの成長ができたのか。何を為せたのか。を考えさせられるという点で、苦手意識すら芽生えつつある。
とはいえ、アイドル事務所のプロデューサーという、一年をまだ長く感じる存在を――つまり年頃の女の子たちを預かる身分である分、まだ俺はマシな方なのかもしれない。
それに自分自身の成長が分からなくても、共に過ごす彼女たちの成長を見れば、自分がこの一年に何を為せたのかは分かるのだから。
つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルが歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じるべきことはなく、故にこうして朋花の新たな誕生日を前に、誇らしき相方に対して俺は自信を持って問うことができるのだ。
さて。社交性と言うものを何処かに落としてしまったのではないかと担当アイドルに本気で心配されてしまう身ではあるが、俺とて流石に担当アイドルの、そして大切な恋人の誕生日まで忘れてしまうような頭はしていない。十一月十一日という大変憶えやすい日付に加え、「誕生日プレゼントは何が欲しい? 全然決まらなくて」
「分からないことを素直に聞けるようになったのは確かに成長かもしれませんね」
ロマンチックさの欠片もありませんが。と、朋花は冷ややかな目を向けるのだった。
あれ? おかしいな……
先程まで俺が向かい合っていたパソコンモニタに『アラサーのあなたに捧げる! 十五歳の彼女に贈りたい誕生日プレゼント四百選!』という俺のためにあるようなサイトが開かれたままなのを確認した朋花は深い深いため息を吐いた。
「本当に、乙女心の分からない人ですね~」
「」
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、二十も半ばを過ぎた今なら思う。
子供の頃の一年は長く、大人になってからの一年は短い。何処かの誰かが「二十代は二秒」と称したのを笑った過去さえ精々三年前の出来事のように感じていたが、調べ物ついでにグーグル先生に聞いてみたところ七年も前の発言らしい。
そりゃ、歳を取るわけだよ。俺も。
子供の頃はやたらと長かった誕生日から次の誕生日までの一年も、あっという間に過ぎ去っていき、気付けば社会に出てから何年目のソレか。孤独に過ごすのも何年目か。と自己嫌悪のループに入り込む始末。
三百六十五個、或いは六個ある普通の日の一つとまではいわないが。
節目ではあっても、めでたくも特別でもない。
この短い期間にいったいどれだけの成長ができたのか。何を為せたのか。を考えさせられるという点で、苦手意識すら芽生えつつある。
とはいえ、アイドル事務所のプロデューサーという、一年をまだ長く感じる存在を――つまり年頃の女の子たちを預かる身分である分、まだ俺はマシな方なのかもしれない。
それに自分自身の成長が分からなくても、共に過ごす彼女たちの成長を見れば、自分がこの一年に何を為せたのかは分かるのだから。
つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルが歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じるべきことはなく、故にこうして朋花の新たな誕生日を前に、誇らしき相方に対して俺は自信を持って問うことができるのだ。
「誕生日プレゼントは何が欲しい? 全然決まらなくて」
「分からないことを素直に聞けるようになったのは確かに成長かもしれませんね」
ロマンチックさの欠片もありませんが。と、朋花は冷ややかな目を向けるのだった。
あれ? おかしいな……
先程まで俺が向かい合っていたパソコンモニタに『アラサーのあなたに捧げる! 十五歳の彼女に贈りたい誕生日プレゼント四百選!』という俺のためにあるようなサイトが開かれたままなのを確認した朋花は深い深いため息を吐いた。
「本当に、乙女心の分からない人ですね~」
「」